世界一貧しい大統領ホセ・ムヒカに学ぶ「豊かさ」とは

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世界一貧しい大統領と言われ世界中でその名が知られているホセ・ムヒカ。彼はウルグアイの大統領だ。2016年に日本に来日し、テレビ出演なども果たし一つの騒ぎとなった。

ムヒカは給料の90%を貧困者の寄付に充て、月収10万円で農場に住んでいる。

そんなことから貧しいと言われている彼だが、彼は「世界一豊かな大統領」だ。

読書家のホセ・ムヒカ

以前ゲリラ活動をしていたムヒカは10年以上も投獄されていた経験を持つ。その環境は最悪であり、トイレはおろか換気扇もマットもない、ただのコンクリートの箱に閉じ込められていた。

コンクリートの冷たく硬い地面と壁に囲まれ、それ以外には何もない環境で正気を保つことは不可能だ。その環境で人間が過ごせば数日も持たずに精神を壊してしまうだろう。この過酷な環境の中で彼の精神を生き延びさせたのは本だった。検閲を受けるため読める本といえば科学の本だけだったが、彼の母親であるルーシーが彼に本を届け続けた。

若かりし頃から大量の本を読み続け、そして今も読書を続けている彼の家には至る所に本が置かれている。世間ではホセ・ムヒカが少ない収入で暮らしていることや資本主義の終わりに警報を鳴らす発言に注目が置かれているが、最も注目すべき点は、その生き方や発言が多くの知性に基づいているということだ。

上辺だけを見ると理想主義者と間違われてしまいそうだが、ホセ・ムヒカは合理的な現実主義者だ。

無神論者の無政府主義者

彼は自然をとても大事にするが特定の信仰は持たない。また大統領でありながら無政府主義者でもある。無政府状態にこそ本当の自由があるとムヒカは語る。

自由とは制限がないことではない。他人に迷惑をかけないこと、他人を搾取しないことが自由の制限だ。自由とは好き勝手して良いことではない。他人の自由を侵害しては自由そのものを否定することになる。他者に危害を加えることは自由そのものを破壊する行為なのだ。

ホセ・ムヒカは人間が人間を搾取している現状を嫌う。そんなことは馬鹿げていると。それでも資本主義自体は現在までの発展を導いたとして評価しているし、社会主義の必要性も説いている。ここで言う社会主義とはソ連などの失敗した社会主義のことではなく新しい社会主義のことだ。その柔軟な考え方も彼の魅力の1つと言えるだろう。

儀礼を重んじない大統領

この素晴らしく合理的な考えを持つ大統領は儀礼的なものを嫌う。彼にとって大統領という権力の周りにあるものは全部お飾りなのだ。そんなものは必要ない。

ムヒカがベルギーの王宮に行ったときに、ネクタイを付けることを勧められたところ、「ネクタイを付けなければいけないなら帰るぞ!」と言い反転して帰ろうとしたという逸話まである。そもそもジャケットを羽織っているだけでも相当譲歩しているらしい。

この儀礼を重んじないスタイルは普段の生活の中でも見られる。この大統領は車のドアを他人に開けさせるなんてことはしないし、偉そうに後部座席に座ることもない。彼が座るのはいつも運転席か助手席だ。もし攻撃を受けたときに運転手だけを犠牲にするわけにはいかない。自分自身も一緒に戦わなければならないとムヒカは言う。

自分が偉いと勘違いした人間は他人に車のドアを開けてもらうのが当然だと思い込むことがある。しかしその勘違いがどれだけ愚かなのか、この異端児の大統領によって明らかになってしまう。この話からもムヒカの器の大きさが伺える。

ボディガードもつけることは殆どない。それどころか誰にも伝えずに外出し、後でそれを知ったボディガードが慌てふためくことすらあるようだ。本気で命を狙われたときには多少警護を手厚くしたところでそれを防ぐことは出来ない。それを知っているからこその考え方なのだろう。

ホセ・ムヒカに学ぶ豊かさとは

世界一貧しい大統領-このキャッチ―な愛称が彼を世に広めたのは間違いないし、きっとこれからもそう呼ばれていくだろう。彼について書かれた本も数多く発行されており、ムヒカの人生についてより深く知ることも出来る。ゲリラとして活動し投獄されていた一人の老人が大統領になる。これは歴史的な出来事だ。だが彼は本当に貧しいわけではない。彼ほど豊かさを持っている人間はそういない。

大量の読書によって磨き上げられた豊かな知性。
知性によって力強くも深みを持つ豊かな思想。
権力に勘違いし踊らされることのない豊かな人間性。
自然と動物に囲まれた家で時間を過ごせる豊かな環境。

これを豊かさだと言わずに何を豊かさだと言うのだろうか。

幸せとは何かを買うことだと勘違いしがちだが、それは間違いだと彼に気づかされる。消費することが幸せだと思っているから、我々は給料だけを見て貧しいと表現してしまうのだろう。

時間を消費してお金を得て、その時間で買ったお金で何かを消費する。我々は知らないうちに消費を元に考えさせられている。

しかし大切な時間を消費するそのサイクルの中に幸せがあるとは限らない。終焉が迫っているのは今の社会形態だけではない。この古く錆び付いたイデオロギー(根本的な物の考え方)から脱出する必要がある。

世界一貧しい大統領と言われるホセ・ムヒカは多くの豊かさを持つ。この一人の老人を知ることで、人生の豊かさを学ぶことができるだろう。

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